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1『メディア・リテラシー -世界の現場から-』
            
 (菅谷明子著 岩波新書 2000年8月発行)


 この本はジャーナリストである菅谷氏が各国で広がっているメディアリテラシー教育を5年間にわたって取材したもので、たいへん参考になる一冊である。

菅谷氏の定義は次のようになっている。

「メディア・リテラシーとは、ひと言で言えば、メディアが形作る「現実」を批判的(クリティカル)に読み取るとともに、メディアを使って表現していく能力のことである。(はじめに)」

 ここで注目したいのは、「メディアが作る「現実」を批判的に読み取る」という言葉である。ただ単にメディアの内容を正しく理解するというような受身的な能力ではないということだ。この「批判的」という言葉は日本の学校教育ではよい意味で使われず、子どもたちにもあまり教育されずにきているが、この姿勢は絶対に大切だと思っていた。菅谷氏がずばりと解説している。

「ここでいう「批判的」とは、日本語で言う「(否定的に)批判する態度・立場にある様子」(岩波国語辞典)といったネガティブな意味合いではなく、「適度な基準や根拠に基づく、論理的で偏りのない思考」(Critical Thinking -A Functional Approach)という建設的で前向きな思考を指している。(はじめに)」

 私たちは、もっと日本のメディアに対して、建設的で前向きな批判をしていかなければならないと思う。特にこども向けに作られたテレビ番組、CM、雑誌などを対象に大人自身がリテラシーを養わねばならない。そして、もし大人が問題があると感じたものが、こどもたちに受け入れられているとしたら、どこがいいと感じるのか、またそれによってどんなメッセージを受け取っているのかなどを十分に討議することが必要だと思う。こども自身がメディアによって作られた「イメージ」に動かされている場合もある。価値観の相違を学び、よりよい情報を求めたい。

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