わくわく学ぼう

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『子どもの危機をどう見るか』
            
 (尾木直樹著 岩波新書 2000年8月発行)

 教育評論家で、メディアなどでもおなじみの尾木直樹氏の福岡での講演を聞く機会があった。
天候のせいか、予想より参加者が少なく、申し訳ない気持ちにさえなったが、尾木氏はあのTVで見るとおりの語り口で、ユーモアあふれる話しぶりに好感が持てた。
 その際、サインをしていただいた著書がこれである。

 現在の子どもの世界に起こっていることを丹念に調査し、その背景を考察している。そして、危機を脱するために今後社会でどのような考え方が必要で、何をしてゆくべきなのかを提示している。

 その提示の最後「子どもと大人のパートナーシップ時代へ」の中に「メディアリテラシーという新課題」が挙げられているのである。
氏は旧郵政省が行った放送分野における青少年とメディア・リテラシーに関する調査研究会報告のメンバーでもあったが、今後子どもが主体的な生活をするために、このメディアリテラシーの能力が必要だと説かれている。

しかし、今の学校という場で、その教育の実践をすることは難しいだろうことは容易にわかる。教師自身(もちろん親自身)の課題でもあるだろう。

「画一的で注入的教え込み型といえる日本の学校の伝統的学習形態では、「批判的」であることを中軸に据えなくてはならないメディア・リテラシー教育を実践することは容易ではありません。その意味でも、メディア・リテラシー教育のためには、学校教育の発想の転換が欠かせません。同時に教師自身が常にクリティカルな視点を有し、市民として社会と教育に主体的にかかわる日常生活をいかに豊かに営んでいるかが問われます。」(p.231)

そして、「メディア・リテラシー教育は、学校や授業だけでなく、子どもを取り巻くメディア環境や社会全体を変えてゆく一つの突破口ともなるのです」と結ばれている。

 私もまったく同感である。メディアリテラシー教育により、いたずらにメディアに躍らされない、逆にメディア社会を作っていく子どもたちが成長していくことを期待したい。

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